『アウトプット大全』 樺沢紫苑著 〜書評〜【上】

 この度『アウトプット大全/樺沢紫苑著』を読了したので、その書評を記述します。この書籍は、私達の仕事や勉強、日常生活におけるアウトプットの重要性を説く本であり、日頃から「学んでいるけれど中々長期的な記憶に定着しない!どうしたら良いのだろう」と頭を抱えている人には非常にお勧めの1冊です。

 私の読書スタイルは基本的に「1つの著作から、大きく分けて5つの事を学ぶ」という形なので、今回は私が学んだ5つの事柄を軸として、著者の精神科医 樺沢紫苑先生の主張を紹介しつつ、それらを踏まえて感じた私の批評を記します。

 本書を既に手に入れている方々にはご理解頂ける事かもしれませんが、この書籍は冒頭から「常識を覆す論説」が満載で、拝読していて非常にスカッとする部分が多く、学びの多い一冊です。アウトプットという従来世間ではあまり重視されてこなかった行為の方が本当は肝要な行いであるという理由について、多彩な研究結果と共に記されています。

 そして、本書の肝「インプットよりアウトプットの方が学びに於いては重要である」という事実を知った時、私は震え上がりました。私は今まで多様な音声メディアや動画メディア、文献や書籍を通じて学びを展開してきましたが、インプット過多で、結局、毎度「吸収した後に何も吐き出していない物事に関しては殆ど忘れてしまっているな」と感じていたので、その悩みの真相を解き明かしてくれたからです。

 前置きが長くなりましたね。では本書籍の書評をどうぞ。

2週間に3回以上使った情報は長期記憶に保存される

 マジスカ!と思うあなた。マジなんです。
 理解してもらう為に、まずはアウトプットの重要性を少し説明します。

 例えば、本書は「月3冊の本を読んで、3冊アウトプットする人」か「月10冊読んで1冊もアウトプットしない人」のどちらが学習効果において優れていると思うかという質問を投げかけます。普通の人なら「10冊も読んでいるのだから多量な知識が獲得できているでしょう。なので後者ですね」と考える所ですが、本書はそうは言いません。キッパリと前者だと言います。

 その理由は明確で「どれだけの量をインプットしても、アウトプットしない限り、その学習に意味はないから」です。その根拠として、樺沢先生が行った面白い研究で、今も売れ続けているベストセラー『嫌われる勇気』について「同書の核となるアドラー心理学とはどんな心理学でしたか?」と読者の方々にインタビューしたそうです。その結果、的確に回答出来た人はたったの1割程度だったとのこと。つまり、残りの9割の人々はその内容を殆ど忘却していたのです。

 そしてここからが本番。この章の表題「2週間で3回以上使った情報は長期記憶に保存される」について掘り下げます。
 本書によると、そもそも脳とは忘れるように作られているのであり、重要な情報しか長期記憶に保存されないと云います。そしてその重要な情報というのは、使われた情報のこと。つまり、何度も使用しているという事は重要なんだなと脳が認識する訳です。「使う」とは、換言すれば「アウトプットする」ということ。

 本書によると、脳に1度入力された情報は「海馬」という場所に2~4週間保管されるのですが、その期間中(2週間~4週間中)に得た情報を繰り返し利用する事が肝要なのです。何度も利活用された情報は脳が「重要な情報」として認識し、「海馬」から「側頭葉」という長期記憶を司る場所に伝達されます。長期記憶を形成するには、何度も学んだ情報を使用する事が大切なのです。

 樺沢先生が仰る目安としては「大体2週間で3回以上その情報をアウトプットする」事で、側頭葉での長期記憶が形成されるとの事です。人にその情報を話してみたり、或いは今私が行っているようにブログで記事を執筆してみたり、アウトプットの繰り返しがあってこそ、学習した情報が記憶に定着していくのです。

 私はこの点に関して、ブログや日記、twitter等を媒体として発信(アウトプット)し始めてからは非常に「学んだ内容が頭に残りやすく」なり、自分の中でも本書の威力を目の当たりにしている所です。正に、この書評記事ですらアウトプットの一種ですからね。

 

インプットとアウトプットの黄金比は3:7

 本書によると、インプットとアウトプットの黄金比は3:7らしいのです。本書を読む前の私は、日頃からインプットだけに意識が集中して、その比率は大凡(おおよそ)インプット:アウトプット=9:1程度でした。取り敢えず「大量に学べば全ては後から結果として現れてくるだろう」という短絡的で安易な考え方をしてしまっていたのです。

 しかし、実際に本書が主張している「インプット3:アウトプット7」の黄金比率が正当なのではないかという根拠を明示的に示唆した実験があります。コロンビア大学の心理学者アーサー・ゲイツ博士が行った実験です。この実験では、小学校3年生から中学校2年生までの100名を超える子供達に「人名年鑑」に記載されている人物のプロフィールを暗記した後、声に出して内容を暗唱してもらうよう指示しました。子供達が暗記と内容の暗唱に使える時間は9分だったのですが、この実験では、元々別に分けられていたグループごとにインプット(暗記)の時間とアウトプット(暗唱)の時間に変化を加えました。

 その結果、子供達の中で最も高い結果を叩き出したのは「約40%の時間を覚える時間に費やしたグループ」でした。更に、被験者の年齢層が上がるに連れて学習能力が向上するので、30%の暗記時間で高い成果を産出したグループもありました。

 本書は、初心者はアウトプットを6割、熟練者は7割程度行った方が良いと云います。

 この理論はまさに私みやびが絶賛実感中のものです。私のようにSNSやブログ、noteでアウトプットする事は、正に巷で言われる「ラーニング・ピラミッド(Learning Pyramid)」の頂点に位置する「人に教える」に該当すると思っています。そして、ラーニングピラミッド的な文脈で言うと「人に教える事」が最も学習効率が高いという事実が様々な文献や研究で証明されているので、正にSNS発信やブログ記事で学習したコンテンツを自分の言葉で発信する事は非常に有用な学びであると言えるでしょう。

 そしてやっぱり、学んだ後自分なりにしっかり吐き出した事はそうそう忘れないものです。以前、私の運営するメディアに公開したDaigoさんが著者の『超効率勉強法』という書籍も数記事作成して書評を記載しましたが、しっかりと記事に執筆(アウトプット)したおかげで、今でもしっかりと抽出したエッセンス的内容が記憶に刻み込まれています。

『超効率勉強法-最短の時間で最大の成果を手に入れる/DaiGo著』書評

 毎週かなりの本を読んでいる私の感覚的に言えば、教える事自体にも学習効率的な価値がありますが、「教える前提」で学ぶ事もきわめて重要で、毎週自分の読んだ書籍を身内や友人と公開し合うと決めておく事で、教えないとヤバイ!しっかり叩き込んでおかないと!という意識が脳に働き、学習効率が格段にアップすると思います。ぜひお試しあれ。

 

意味記憶を「エピソード記憶」に変換しよう

 本書は、アウトプットが苦手な人は「人に説明する」ことで効率的にアプトプットが行えると主張します。「意味記憶」とは、orange=オレンジというシンプルで淡白な組み合わせを指します。一方「エピソード記憶」とは、一連の流れがある物語、ストーリーとしての記憶の事を指します。よって、人に説明するというのはエピソード記憶に当たります。

 例えば、三角形の面積の公式は「底辺 × 高さ ÷ 2」ですが、その公式単体で理解して覚えようとするのではなく、「あれ?なぜ三角形の面積の公式はこうなるんだろう」と自問自答し、自分なりに調べたり勉強して導き出した答えを人に説明してみる事が非常に大切だと云います。ちなみに答えとしては「三角形の頂点から垂直二等分線を引いた場合、面積の等しい三角形が現れるから」です。

 本書によると、脳の特性上「意味記憶は忘れやすく、エピソード記憶」は忘れないと言われています。先ほど述べたラーニングピラミッドと同様、人が理解できるように説明しなければならないエピソード記憶は脳への定着度が圧倒的に高いのです。

 身近な例で言うと、英単語を単語帳でゴリゴリ覚えようとするのではなく、英長文の中で単語を覚えようとする行為の方がエピソード記憶を増やそうとしている点で素晴らしいと言えます。なぜなら、英長文には必ず題名があり、その上でしっかりと磨き上げられた内容が組み込まれているので、思い出す時に「あ、あの時の話で出てきた単語だ」と想起しやすくなるのです。英語学習をしている方は是非実践しましょう。

 社会科の学習も同様で、例えば歴史で言うと「〜年に〜という事件がありました、その首謀者と被害者は〜です」という意味記憶だけでは脳に長期的に保存されません。一時期は記憶に定着していたとしてもすぐに忘却してしまうでしょう。なので逆に、「〜が起きたのは〜という原因があったからで、〜という権力関係が働いていたんだ。あと、〜という人物の妬みも関係していたんだね」という物語を自分の頭で思い描く、あるいは資料や文献によって知る事で、エピソード記憶として学んだ一連の内容が長期的に記憶されていくでしょう。

 

全部を鵜呑みしないように

 ただ、ここで私みやびの独創的発想をあえて挟むなら「身近に迫る短期間のテストに向けてなら、無理にエピソード記憶を利用しなくていい」という指摘をしますね。なぜなら、エピソード記憶をしようと思うと、ある事象に対して関連する出来事が多すぎるので収集するのに時間がかかり、短期的で準備時間が比較的少ない中間・期末テストなどには適さないからです。

 準備時間が十分に用意されていないテストや試験に関しては時間に制約があるので、バンバン意味記憶(短期記憶)で覚えていったほうが良いでしょう。そもそも意味記憶では記憶が定着しない!とは一言も語られていませんし、意味記憶でも乗り越えられるテストはそれで済ましたほうが効率が良いのです。

 しかし、大学受験の勉強や司法試験、その他多数の難関試験では単純な意味暗記だけでは対応不可能な問題が多々ありますので、それらを突破する為にはエピソード記憶を身に付ける必要があるでしょう。応用問題になると、物事の流れや自分なりの思考力が試される問題が頻出しますので気を付けましょう。


 本記事では『アウトプット大全/樺沢紫苑著』において気になる3つのポイントを紹介しました。次回記事で残りの2つを紹介します。

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miyabi_kyosaka
教育実践キュレーター。慶應義塾大学在学中。NPO法人日本教育再興連盟ROJE所属。読売新聞学生記者。日本若者協議会所属。某 AO入試専門塾講師。N高等学校出身。|「未来は予測するのものではなく、この手で創る」をモットーに圧倒的行動で教育を一新しようと、教育ジャーナリズムの活動をしております。