インタビューレビュー – スタディサプリ発足人 山口文洋氏 〜スタディサプリと学校教育〜

4月某日。リクルートマーケティングパートナーズ 目黒オフィスにてスタディサプリ発足人でありICT教育の最先端を走られる 山口文洋さんにインタビューをさせて頂きました。


(山口さん自身が僕の考察・意見を掲載することは了承してくださいました。)

山口文洋さんへのインタビューを通しての考察(レビュー)と僕の意見をを明記します。

 (諸事情により、山口さん本人のお言葉を記載することは出来ませんが下記Contentsで紹介している議題は全て山口さんと実際にお話しさせて頂いた物になります。)

Contents
0.premise(現状の学校教育に対する前提認識)
~山口文洋氏 インタビューによって得た考察~
1.学校教育の役割
2.子ども達へ、政府からの切符
3.自立した人間の育成
4.スタディサプリと人間形成
5.日本とアメリカの学校現況と成績評価
6.スタディサプリとN高等学校
7.変わる学校と変わらない学校
8.教育学部と教員免許
9.Adaptive Learning(個別最適化学習)

0.Premise(前提認識)
近代的な学校教育機関は「明治維新」の頃、政府の政策として掲げられた「富国強兵」を元に確立されました。

イギリスで起きた産業革命による世界の工業的激変から1歩遅れていた差を縮めるため、政府が作り上げた機関です。

目的は「言われた事を言われた通りにこなす従順な生徒の全国的育成」でした。

当時は家柄や身分、金融的理由によって学校に通う人はほとんどいませんでした。しかし政府が「立身出世」と声をあげ始め、その影響もあり、次第に全国を通して就学率が伸びていったのです。立身出世とは「勉強に励み、いい大学を出て、いい会社に入れば、一生安泰」的な現代の「出世」です。

しかし火を見るより明らかなのは「学校は現代社会において、圧倒的時代錯誤真っ只中である」という事です。

掘り下げていきましょう。

1.学校教育の役割
日本の学校のあり方は工業生産に必要な機関でありましたし、現在も同様です。

しかし政府も愚かではないので薄々気づいています。そして21世紀における人間力形成や求められた人材育成の場として学校という場が変わらなければいけないという指針やコンセプトは掲げています。

しかし本当に全ての学校が一気に変わるのかという事です。

時間もかかればほとんどの人が硬直化する可能性はあります。

時間はかかれど、その架け橋として山口さんはスタディサプリを日々運営し成長させているのだなぁと感じました。

受講者や気づいた人が変るべきであるし、多様化する社会において「学校という枠以外で学びたい」というニーズに応えるスタディサプリの様な場が必須なのだと考えます。生徒が個々人で自由に情報を取得できる様になったので、インターネットの恩恵により、今まで閉ざされていた選択肢や幅が一気に受講者側に可視化されるようになりました。

2.子ども達へ、政府からの切符
「自立」「主体性」という言葉。

自分の足で自分の頭で考えて、自分で決めて決断し、失敗を恐れず歩いて行ける力をつける事が今の時代に非常に必要だと感じました。

僕がなぜ沢山の方々のところへ足を運び、意見をお伺いしインタビューしているのかというと、「好きだから」です。

今幸いにも毎日元気に暮らせて研究をさせてもらってるという中で、僕はもっとより良い個別最適化を子ども達に選択肢として与えたいと思っています。

しかし、もし僕が上記の事柄に全く興味がなく、ただ親や先生に言われたからやっているという風になれば話は変わってきます。

依頼文に説得力もなくなれば、実際に質問する内容の質も下がるかもしれません。受動的だからです。

自発性、自主性を持ってしてしか生きていけない社会になりつつあるという事です。この間ちょうどトヨタでもアナウンスしていましたが「終身雇用」が崩壊し、様々な大企業が複雑化したグローバル社会を不安的に生き抜いている中で、組織にすがる時代にはすでに終止符が打たれました。

そんな険しくも希望ある社会を生き抜いていく中で今、文部科学省をはじめとする機関がこれからの社会を作っていく子ども達に方角の書いてある切符を授けようとしています。

正直政府だって不安であり、先は予測不可能だと思います。しかし方向性として様々な場で叫ばれている自主性を育むという理念は非常に社会に合致しているなと感じました。

3.自立した人間の育成
山口さんとのインタビューを通して1番の課題だと思ったのは、「必ずしも好きな事を全力で自主性を持って行える人間ばかりではない」という事です。僕が活動をしている様に他の日本全生徒が行なっているわけでは決してないのです。

だからこそ「どうそういった人たちに自主性を持たせるか、促すか」が大切になってくるのだと思いました。

同学年に100万人いるとしてもそういった自発的活動が出来る、アクションを起こす人は全体の1%程の可能性もあります。

考えてみたら理解出来たのですが、「キッカケ」がない限り僕だって自主的に学ぶ事を開始していたかは保証できません。

たまたま僕は教育分野に行き着く様な経験をしただけであって、残りの90%程度の人達が必ずしも通る道ではないなと感じます。いわゆる先生や教師といわれる職業の人達の今後の役割は「生徒を目覚めさせるキッカケづくりの人」になると思っています。

英語数学理科社会を教える前に11人の生徒に向き合って「その人の個性や性格に合わせて、本当に自分の頭で考えて自分の足で失敗を恐れず歩み、チャレンジしていかないと、この後厳しくなる社会の中で生きていけないぞ」と言う事を子ども達に伝えるべきだと思います。

Teaching→Facillitateへのシフトが必要なんじゃないかなと。

意外と僕自身の実体験として自分の興味のある分野の中で違う分野への興味が必然的であれ偶発的であれ湧いてくると、そちら側の知見も得たくなるし、そうじゃないと次に進めない事だってありますから、「動機づけ、キッカケづくり」さえその都度あれば、子ども達は学んでいけると思います。

英語数学理科社会(主要5教科)、技能4教科を含めて固定化された教科を子ども達へ提供する場合には「その先にどう活かせるのか、こう言う場面でこう言うシチュエーションで生きてくる」と言う事を明示する要素がないと、暗記詰め込みの書面上の学びだけでは促進させることが出来ないのです。

野球選手になって海外に行く人やサッカー選手で海外に行く人はみんな英語やドイツ語などの外国語を学びますよね。

基本的に脳は機能を節約したがるので、生物学的に詰め込み教育はやはり幻想に過ぎないのだと思ったり。

ただ主要5教科はどこまで行くかは別として、確かにグローバル化された社会の中で必要になってくるのは間違い無いと思います。だからこそ「動機づけ」の部分が大事だと思います。そして動機づけが個人として出来ればそういった人達は学校に行くことは必須では無いと思います。

東京大学,慶應義塾大学 鈴木寛教授もおっしゃっていましたが、学校としては「機会の平等」を提供するべきであったり。

Youtubeを教科にすれば大半の子供達(それでもやらない人はいると思うが)は積極的にやると思います。今やYoutuberは社会的影響力が非常に強く、職としても世間から認知されているので、像が描き易いと思います。

社会におけるほぼ全分野の詳細微細含む情報が可視化された中では、子ども達に「これやっとけば大丈夫」と与えることはリスキーであり、一種の無責任だと思います。先生の時代は逆にそれが生きた時代の社会的勝利の方程式だったので「無責任」と言う言葉は語弊があるかもしれないです。

現行の日本社会における数多くの会社企業の中ではすでにそういった知識的な教育は施されていないところもあり、課長や社長は「どう、社員に動機づけを持って意欲的に働いてもらうか」を試行錯誤されているのだと思います。

4.スタディサプリと人間形成
山口さん自身も「自分が子供の頃、こんなものがあったら良いなぁ」という意図で世の中にスタディサプリを提供されています。

   興味のある物に子供達は暗中模索で進んで行きます。

でも学校は前提として興味のないものに加えて、平均点まで皆を持ち上げようとしています。

暗記テストだけで平均点以上なら「お前ら頭いいなぁ」。平均点以下なら「お前らバカだ」。

なんでそれだけで人間の序列をつけてるの?ということですね。日本人の自己肯定感が低い事は有名ですが、「行き過ぎた仲間意識」や「度を超えた平均主義」によって、本来高め合うはずの仲間たちとの間に決別が出来上がり、自分たちで自分たちを苦しめている可能性があるのです。

「あいつはいい大学出てるからせこい」なんて、誰も言及する権利は無いと思います。

その後その人が入社した会社がずっと存続していくなんて現代社会においてどこにも保証されていません。

だから尺度は個々人にあるべきなのです。自分が楽しい、人が楽しいと思う事をどれだけ自然に尊重できる意識が根付くか。これが大切だと思います。

小学1年生から皆、何かしらの可能性を秘めているのに中学高校と12年間も押しつぶされているとそりゃそうなっちゃいます。

仮に旧世代的価値観という大枠で考えるならばひとつの尺度で人を図ることは良かったのですが、そこに時代錯誤があり、「旧世代の学び直し」が扇動されるべきであると論じます。

全ての世の中のリベラルアーツをスタディサプリに載せれる様になれば、非常に有用であると考えます。その後、価値の均質化的な部分での論争はあるかもしれませが。

5.日本とアメリカの学校現況と成績評価
山口さんとの話で非常に興味深かったのはアメリカと日本の学校現況と成績評価です。

日本と世界の成績評価観点や有無は全く違うものがあります。

ある意味日本は1億総注入「みんな一緒に公平に平等な」といったところで、逆転が起きる様な社会を作りたかったからシンプルな偏差値競争を作ったという説も考えられます。

逆にいうとアメリカは伝統的に多種多様性があり、支配階級などが区別されていて、今でも富裕層と貧困層が二極化しています。何か絶対的な壁がアメリカにはあるのかもしれません。

日本は文科省を始めとし、沢山の政策(問題もあります)が施されているからこそ「相対的に」水準は高いとも言えます。

アメリカには文科省がなく、各州政府が教育省の様な物を持って任せています。学校設立も一般企業で可能になっていて、そこでは規制緩和がされていますし、色々なタイプの学校があります。しかし結果として「いい学校は授業料が非常に高い現象」が頻発していて、貧困層は劣悪な環境で学ばざるを得ない環境になっています。

そう思うと、日本の学校はある一定のQuality Controlがなされているとも考えられます。アメリカの学校でテレビに取り上げられる様ないわゆるスゴイ学校は実は一部で、光と闇の様な「え?こんなのが学校?」という酷い学校も多々あります。それにより貧富差が激化しているのです。

山口さんに共感したことが多々あり、その中でも「綺麗な世の中。白黒の世の中というものはなく、どっちが良いというものが世の中には存在していない」という事です。白と黒が混ざったグレーな光と闇が混在したものが社会で、そのグレーの中でも「やっぱり白に行こうよ」と世の中を巻き込んでチャレンジしていかないといけないのが教育だと思いました。

今現時点で「多様な学びがあって良いよね」というだけでも学校教育現場は一苦労だとお聞きしました。

6.スタディサプリとN高等学校
N高とスタディサプリはある意味で対局にいる存在かもしれません。

N高は、「新しく」自立的なSelf Managementが出来る子供達が集まって全日制の学校じゃない振り切ったインターネットだけで作ったという位置付けで、

スタディサプリは「今の学校の形が」どういった方にITの役割を適用し、21世紀に順化していけるかを示すものだと思います。

僕はスタディサプリによって、オセロ式に現行の学校教育が変わっていく可能性が大いにあると思います。

「いい学校とは何か」「いい企業は何か」と考えてみると、「入学した時よりも卒業した時の方が成長できているな」という事だと思います。

それは学力が上がったとか、仕事のスキル経験が積めたという事ではなくて「当事者意識や主体性」が付いているかが大事だと思われます。

「自主性」に集約しますが、やはり結局は予測不可能な時代を生き抜いていく中では何度でも連呼すべきだと思います。

「お前はどうしたいんだ」「お前とは何なんだ」ということを学習者は日々問われるべきだと思います。全てが全てインターネットだけで完結するのはあまり良くなく、リアルに人が集まってディベートしたり創作していく事も必要になってきまし、反転学習的側面も大切だと思いました。

7.変わる学校と変わらない学校
3割は変わってきていて、7割は変われていない」というものが山口さんの視点です。だから世の中全体で見ると「学校は変わっていない」と見えるのだと痛感します。その7割をどう変容させていけるかが今後の勝負であると感じています。

8.教員学部と教員免許
振り切った学校が出てくると一番良い部分は少なからずあります。

先生や教師は訳すとteacher,teachingになります。なので、根本は日本の教育学部のカリキュラム変更も必要なると思います。

要はそこで教えている事が「教壇に立って一方的に授業をするためのもの」であり、基本的にteacherになるための育成です。

teacherでもあるがfacillitatercoachでもあるべきで、teachの部分はスタディサプリ的なEdtechの部分で補充できると思います。

だからこそ心理学や行動経済学、子供達へのモチベートの仕方等を教育学部では育まれるべきであると思います。

教員免許の意義も問い直すべきだと思います。人生100年時代の中で兵役ではないけれども教師には「なれ」と言われた人は5年間ならないといけないシステムが出てきても面白いと思います。数多くの人にはできない経験をした著名人などが自身の体験を子供達に教えてくれるという事も面白いと思います。そこでは人生のキッカケづくりをより育めると思います。

9.Adaptive Learning(個別最適化学習)
学校の良くない部分は一斉授業をやってしまうので一人一人の学力に合っていない事を施してしまっている点です。

人間はどういう時に1番成長するかと言うと「どうやっても何回解いても80点くらいしか取れない物への悔しさがある時」だと思うのです。しかし50点や30点しか取れない問題は「仰げば尊し」感でやる気がなくなるし、余裕で満点を取れるテストで1020分で解き終わる物ばかりだと人間本気を出さないのと思います。出来る人からすると「なんでこんな無駄な事をしているの?」となるわけです。

だからこそAdaptive Learning(個別最適化学習)の良い所は、自分の分かる部分から分からない部分を一歩一歩歩んでいける事で「自己肯定感」が生まれる所です。

スタディサプリの面白さは、個人で申し込んでいる人達は偏差値の高いSelf Managementが出来る人達で、残りの半分の使われている現場は偏差値が30~40の学校ばかりな事です。なぜかと言うと高校に入ってもそこでの生徒達は小学校や中学校の基礎学力の部分でつまづいた子供達が居たりして、そりゃ急に高校の授業が始まってもついていけず、不登校にもなるし退学をしてしまうからなのです。

「自分はこのペースでやってみたら出来た」や「ABCからなら俺も出来るじゃん」と言う自己肯定感が生まれれば、自分は兎ではなく亀かもしれないけれど、コツコツやれば僕も出来るんだ。となるかもしれません。大学進学とか企業就職に生かすことがゴールではなく、その子供達が人生に対して希望も自信も失っていた中で「生きる向上心」を生み出すものがAdaptiveなスタディサプリの仕組みだと思います。

~山口さんへのお礼~

お忙しい中非常に貴重なお時間をありがとうございました。

ICTの普及に僕も寄与出来るよう日々精進して行きたいのです。

色々な側面の経験を積み、より説得力のある意見を展開し、実際に道筋を描き、行動していきたいと思います。

[山口文洋氏 プロフィール] 株式会社リクルートマーケティングパートナーズ 執行役員
まなび事業統括本部 本部長
大学卒業後、2003年からITベンチャー企業にてマーケティング・システム開発を経験。
2006年リクルートへ中途入社。進学事業本部で事業戦略・統括を担当したのち、メディアプロデュース統括部に異動。社内の新規事業コンテストでグランプリを獲得し、受験サプリの立ち上げを手がける。
2012年にRMP統括部長、2013年ネットビジネス本部本部長、20154月より代表取締役社長を経て、20194月より現職。
GLOBIS-山口さん
~予測不可能な時代を生き抜くための教育とは~
https://www.youtube.com/watch?v=CnEjVUaTtMg&t=70s

~テクノロジーが変える教育の未来~
https://www.youtube.com/watch?v=AnNIbVSBYJs&t=1441s

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です