『コロナ禍における教育の在り方』〜教育のオンライン化がもたらす功罪〜 花まる学習会 高濱正伸代表【上】

『コロナ禍における教育の在り方』〜教育のオンライン化がもたらす功罪〜
花まる学習会 高濱正伸代表【上】

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、教育の世界では大至急でオンライン授業への移行が行われています。しかし、オンライン授業にも功罪があり、デジタルデバイス普及率の格差や学力格差など、オンライン教育に対する懸念の声は後を絶ちません。

今回は、NewsPicksや多くの講演会で、教育に対する様々な提言を為されている花まる学習会 高濱正伸代表に、コロナ禍の教育とこれからの教育のカタチを2回のインタビューを通じて学んでいきます。


Contents

⚫︎ 全面的にオンラインに移行し、授業を小分けして配信する

⚫︎ オンライン授業のメリットとデメリット

⚫︎ 本来のスクールとは「群れ」であり、集まって学ぶことも大切に


全面的にオンライン授業に移行し、授業を小分けして配信する

ーー Covid-19の感染が拡大している中、花まる学習会ではどのような教育が行われているのでしょうか。

高濱
2、3日前から他のメディアでも少しずつ記事になり始めていますが、花まる学習会の子どもたちは未就学児や小学校低学年が多いので、アナログで集まって密集し、スリスリして「先生〜!」と抱きつききながら授業をするのが一番大切だと言ってきました。

教育改革実践家の藤原和博さんも、これからは反転学習が主流になり、世界一や日本一良い先生の数人が子どもたちを教えれば、担任の先生は生徒児童と一緒に見る側に立って、コーチングの方に回れば良いと仰っています。

私はもともと、そのような教師の役割分担論については、中高生や小学生56年以降は可能だけれど、幼児や低学年はそんな生き物ではないので決して甘くないですよと言っている側でした。しかし、3月・4月になって、医療関係者の方々の話を聞き、京都大学のノーベル賞を受賞された山中伸弥教授などのお話も聞くと、これはちょっと甘くないなと思ったのです。このウイルス禍は間違いなく長引く事が予測できたので、子どもたちに一定品質の教育を届け続けるためには、「全部オンラインに変える」という一択になりました。

もちろん社員の一部には、突然の変更に不安を訴える人はいました。しかし、世の中全体の急変は明らかだったし、我々も既に無人島や火星のような異世界にいたようなものなのだから、この星やこの島でやるしかない!という状況でどう生きるかを考えなければならならず、集まれない世界でどう生きるかについての新しいカタチを追究しようと、各ブロック(学年)毎に分かれた編成を土台に、各学年を分担してオンライン授業を構築し始めて、今に至ります。

ーー Youtubeでも紹介されていましたが、実際に、現在の花まる学習会で行われている授業はどのような形態なのでしょうか?

高濱
普段(Covid-19以前に)行っていた授業は10〜12項目くらいで、漢字の練習や計算、図形や発想力育成などがありました。

今回のコロナ禍においては、実際に家庭の悩み相談で1位にランクインする「ペースメイクできずに困っている」という課題を解決するために、それら5分単位で進んでいた授業を小分けにして毎朝「毎日花まる」という15分バージョンの授業を×5個作成し、ペースメーカを作ろうと考えました。これらは完全オンライン配信で、観れなかった子どもたちは夕方や夜でも観れるようになっています。

コミュニケーションの部分に関しては、週1時間(60分)程度、担任の先生が子どもたちの顔を見て「どうしたの?元気ないね」とか「ピアノの練習してる?」などと声掛けしコミュニケーションを行う時間を取っています。

ーー 授業の配信方法は具体的にどのようなツールを使用されているのでしょうか?

高濱
花まる学習会では基本的にZoomを使用しています。

Zoomはセキュリティの問題が浮上していますが、調べ上げたら、同業他社のシステムも「悪意を持って侵入されたら同様に止められるものではない」ということが明確になりましたし、国家防衛に関する事柄を配信しているわけではなく、盗まれる何かを配信しているわけでもないので、問題は少ない、やるしかない、と決断しました。実際、学校現場ではZoomの利用が急激に加速していますよね。

オンライン授業のメリットとデメリット

ーー 世間でよく議論されているオンライン授業のデメリットとして「コミュニケーションの問題」があります。花まる学習会でもコミュニケーションの部分で問題を感じる場面はあるのでしょうか。

高濱
子どもたちに「安心を感じる」とか「この先生が好き」、「楽しい!」や「みんなの声を聞こう」などと感じてもらえるような段階には到達しているのですが、やはり「勉強でこの子は今どこが理解できていないのか」と手元を見る事ができないのは壁の一つですね。

それにより、親にある程度の負担がかかってしまっていると思います。中高生などはなんとか自力で行う能力があると思いますが、幼児にはできない事が多い。そんなときは、どうしても保護者に補助してもらっています。確かに書画カメラなどで共有する事は可能で、個別では行えるのですが、そのような機械を利用する場合、料金が高額になってしまいます。

ーー 逆に「オンライン学習のメリット」はどのような点が挙げられますか。

高濱
オンライン化のメリットは多数あって、私も個人的にまとめました。

まず1つ目は動画配信の場合「何度でも観られて、自由に止められること」です。

今回のことがあったからこそ、「なぞペー」という思考力を鍛える授業に関しては、今まで各々現場の先生が実施していたところを私が授業を行うようになり、逆に保護者の方々には喜んで頂いた面もあります。

2つ目は「全員が最前列であること」です。

既にオンライン授業を進めている高校の先生方も仰っていることですが、オンライン授業では普段の学校の授業より6〜7割ほど授業が早く進むのです。要約→要約で授業が行えるので、ゆっくり黒板を書くような作業が必要なくなるわけです。

3つ目は「どこでも受けられること」です。

最近、親御さんによく言われているのが「このままずっとオンラインでやってくれる方が、旅先に行こうがお盆だろうが、休みだから行けません!というのがなくせます。イギリスに行こうがどこにいようが授業が受けられます」ということです。

ーー 「今までの人生や普通の生活では会えないような先生の授業が受けられる」というのはオンライン授業の大きなメリットですね。オンライン授業は子どもたちにとって非常に貴重な機会を創り出してくれます。

高濱
そうですね。全く新しいメリットを、たくさん提供してくれていますね。

先ほどのデメリットの追加としてもう一つ挙げるならば、「温もりを与えられないこと」です。小さい子どもたちは普段くっついて来てくれますし、それができない事も一つのデメリットですね。

本来のスクールとは「群れ」であり、集まって学ぶことも大切に

ーー この情勢の中、文部科学省含め、日本全国の教育界ではICT化が全面的に推進されています。そのようにして今後、学校という物理的空間が必ずしも子どもの主軸的学びの場ではなくなっていく中、家庭学習が本流となる事のメリットとしては何が挙げられるのでしょうか。

高濱
元来、スクール(学校)という言葉には「群れ」という意味があると教わったことあります。

花まる学習会の社員研修で一番最初に言う事でもありますが、やっぱり子どもたちは、向こうで子どもの声が集まってワァー!となっていれば絶対そこに行くのです。子どもたちは元々、共生が好きだし、集まりたいし、皆がやるから私もやる!と言う行動原理があります。なので、学校で学ぶことが重要なこともあるのです。幼児のお子さんなどは皆と一緒だから動く場合が多く、一人ではつまらなくて寂しさを感じてしまいます。お母さんと二人きりなんて、愛が裏返って、監視されて、色々指示されて、地獄のような状態になることもあるわけです。

先生の役割に関しては、子どもたちの「学び」に対して「こういうタイプの子にはこういう授業が向いてるよね」と選定したり、「算数は高濱先生の方が良いんじゃない?」などと助言していくことが求められてきます。それ以外は、授業映像を子どもたちに見せながら、パッと止めて「今のこういう部分はわかりにくかったよね」などと言いつつ、授業後に分からなかった子どもたちを教導するようなコーチング的な役割が今後の先生には必要になってきます。そういう時こそ、集まってるからこそ生まれる良さがあるわけです。

ーー 実際、集まらずに分散しているN高等学校などの通信制高校のオンライン授業では、授業用の教科書が映し出された画面を、先生がマウス(カーソル)で辿るだけのような講義もあります。ライブ授業なども実施されるのですが、コメントを拾ってもらえなければ問題が解決できなかったり、つまずいている問題を解決するのにメールでやり取りを行うので、どうしてもタイムラグが出たりしていますね。

高濱
つまずいた時に「君ここできていないね。教えてあげるからちょっと来て」という場面がないのはもったいないですね。

実際、小学生などは大人からすると別の生き物なので、皆は現場を見た方が良いと思います。皆さんが記憶にあると思っている教育観は、実は覚えている中高生以降の記憶に偏っている可能性があるのです。幼児は本当に宇宙人のような面白い行動を起こしたりします。そういう幼児たちをしっかりと学ばせたからこそ今の花まる学習会があると考えています。

(取材:京坂 雅 @miyabi_media
(記事画像:射落美生乃 @00trans_

インタビュー後編では「伸びる子どもの共通点」や「本質を捉えることの重要性」について高濱代表に伺っていきます。


 

〜 高濱 正伸(たかはま まさのぶ) プロフィール 〜

 高濱 正伸(はなまる学習会 代表)

花まる学習会HP:hanamarugroup.jp
Twitter:@19590314

・1959年熊本県人吉市生まれ。
・県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。
・東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。
・花まる学習会代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。
・算数オリンピック作問委員。日本棋院理事。

『情熱大陸』『カンブリア宮殿』『ソロモン流』など、数多くのメディアに紹介されて多くの反響が寄せられている。週刊ダイヤモンドの連載を始め、朝日新聞土曜版「be」や雑誌「AERA with Kids」などにも多数登場。ニュースキュレーションメディア『NewsPicks』のプロピッカーを務め、NHKラジオ第一『らじるラボ』の「どうしたの?~木曜相談室~」コーナーでも第2木曜日の相談員を務める。

– 著書多数 – 

       

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