『ポスト5Gの世界まで見据えたICT教育を』〜教育の4象限を考える〜 Learn by Creation 竹村詠美代表【1】

 COVID19が世界中で急激な感染拡大を見せる中、学校の先生はどう対応すれば良いのかどの様なICT環境を構築するべきなのか。2011年に世界中のイベントが集まるプラットフォーム『Peatix.com』を共同創業者としてローンチし、昨年度からは、教育者と保護者・子どもたちが、起業家、クリエイター、など社会で創造的実践を行う人達とこれからの学びを考える大型イベント「Learn by Creation」を主催されている、竹村詠美代表にお話を伺いました。

 ※本記事は特集 第1回目となります。


Contents

⚫︎ 有事の時 覚悟を決めてオンラインに踏み切ろう

⚫︎ ポスト5Gの世界まで見据えたICT教育を

⚫︎教育の「4象限」 オンラインとオフライン、同期と非同期


有事の時 覚悟を決めてオンラインに踏み切ろう

ー COVID19の災禍において、教育のオンライン化が推進される中、学校教育の現場はどの様に変化しているとお考えでしょうか。

竹村代表 日本の場合は、COVID19の第2波、第3波にも備えて、GIGAスクール構想(文部科学省が2019年12月に打ち出した、児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する構想)という方向性と共に、「学びの保障」という観点を重視している初期段階だと思います。ですから、まずはオンラインで授業が継続できるようにしようと、授業動画を作ってケーブルテレビやYoutubeで配信に挑戦をされている学区や先生もいらっしゃいますが、内容についてはまだまだ票が割れるところだと思います。

 「ICT利用」という観点では、今の教育現場では、考え方がかなり二極化していますが、以前行われた文部科学省の会見では、現在は「危機」なのだから、必ずしも全員同じ端末を利用する必要はなく、積極的にICT化を推進していきましょうという声掛けもありました。今の教育は、文部科学省→教育委員会→学校という具合に、トップダウン・縦型の組織系統が強く、間違ったことをしてはいけないという思いが強い学校文化においては、結果的に前例主義に陥りやすい傾向があります。

 横浜創英中学・高等学校の工藤勇一校長(元 東京都千代田区麹町中学校校長)からも、ゴールデンウィーク時に我々のイベントにご登壇いただいた際に「今は有事で、仕事が無くなると危惧している大変なご家庭に比べれば、教員は全然守られている方なのだから、しっかりと覚悟を決めてやりましょう」というコメントをいただきました。日本人は本当の危機に立たされると、ドミノ倒しの様に一気に変容していくことも可能だと思うので、良くも悪くもCOVID19は変化の起爆剤になっていると思います。

 現在は学校再開が前倒しになって、既に多くの学校が始まっており、現場の先生方は120%「遅れを取り戻すこと」に必死だと思います。なので、一般的に研修期間として重要な位置付けを占める夏休み等で、今回の件を確実にリフレクションをする機会を用意することが大切です。今後のパンデミックに備え、学校への通学形態のシナリオに合わせて柔軟に組み替えができる学校運営体制を目指していくことが、変化の激しいこれからの時代に求められています。

 今では、校長先生で非常にリーダーシップのある方、現場の教員の方々で開明的な方も多くいらっしゃって、少しでも先を行く先生は既に自分たちの活動内容を、いわゆる形式的なオンライン授業ではない形態として、積極的に発信されています。全ての教員がその様な活動をする必要はありませんが、以前から先進的な発信をされていた教員の方々が、今回の感染症拡大でよって一層と情報発信の手立てを得たと思います。ですから、今までの情報発信では、あまり多くの人に受容してもらえなかった事柄でも、現在はZoomやMicrosoft Teamの様なツールを積極的に活用することで多くの人に伝達できている事実は非常に大きいことだと思います。

 今回の有事でオンラインを活用した学びの実践例が急増することで、「オンライン教育の可能性」を感じた教員は多々おられると思いますし、向こう1、2年で、そういった方々がどの程度ベストプラクティスを広げていけるかが肝要になると思います。時代の流れとしても、元々GIGAスクール構想が推進されており、Wi-Fi導入によるオンライン利用の活発化など、ICT環境の整備は(諸外国と比較してかなり遅れてはいますが)徐々に進んでいます。なので、ICT教育に向けた本当の「土台」はやっと整いつつあります。

 このタイミングでは、教育現場におけるICT利活用を当たり前にする為に、いかに「一気に変われるか」が非常に重要です。単純に「デジタル教科書になって、家でも学びが出来ますよ」というだけだともったいないので、まだまだ時間はかかるかもしれませんが、オンラインでどう「意味深い良質な学び」の環境を提供できるかも大切になっていきます。

5Gの世界まで見据えたICT教育を

ー 日本はICT教育の観点で世界と比較した場合、圧倒的に遅れをとっていますね。

竹村代表 そうですね。スタートが遅れている日本の場合は、どこまでリープフロッグ(技術が段階を飛び越えて一気に進展)出来るかが大切になります。インフラ(施設環境)的な視点で見れば、昨今は既に5G後の世界に関する議論が活発化していて、日本の教育も「ポスト5Gの世界」を視野に入れた教育ビジョンを形成していけるかが重要なポイントになります。この点に関しては、若手の方々が旗印を挙げて推進すれば、可能性はあると思っています。

 国によって状況が異なり、東南アジアやアフリカなど、日本と比較してGDPが低い国に関しては、無料でアクセスできるというメリットを享受するためにオンライン学習がかなり波及しています。アメリカやヨーロッパに関しては、探究学習や個別学習の為にオンラインが活用されてたりします。日本では従来、リクルートのスタディサプリに代表される様な、基礎学習を意識し、単元を効率良くこなしていくオンライン学習が中心でした。基礎学習も大切ですが、今後は、「それ以外に何が出来るのか」について、オンラインにおいても急激に試行錯誤が進むと考えています。

教育の「4象限」 オンラインとオフライン、同期と非同期

ー 竹村代表は二児の母でもいらっしゃいますが、ご自身のお子さんたちは現在、どの様な学びを展開されているのでしょうか。

竹村代表 私の子どもたちは、二人ともモンテッソーリ教育を実践するインターナショナルスクールに通っています。元来のモンテッソーリ教育は非常にハンズオン(体験学習的)で、オンライン教育を前面に出した学校ではありません。とはいえ子どもたちは元々Googleのプレゼンやワードのアプリを使っていたので、遠隔学習への移行は比較的スムーズでした。上の中学生に関しては、遠隔学習中は、毎日沢山の授業をオンラインで受講していました。小学生の子については、オンラインでの学習時間はそこまで多くありませんが、課題が出るので、自分でスケジュールを立てて、期限までにこなして提出していました。いわゆる自律学習に近い形です。

 私の例からもお分かり頂けたと思いますが、オンライン学習の形態は「学齢」に大きく左右されます。先日、インターナショナルスクールの先生方にインタビューをしたのですが、オンラインとオフラインの2象限に限らず、同期か非同期かという2象限も含めた「オンライン学習の4象限」を考える必要があり、これら4象限をどう組み合わせて学びを創るかが、現在の学校現場に求められていることだと思います。

 今はオフラインの2領域が排除された状況で、オンライン教育におけり同期・非同期の学びを学齢に応じてどう適切に配分していくかが議論の的となります。「オンライン教育」と聞くと、どうしても、リアルタイムの授業やディスカッションなど「同期された学び」にフォーカスを当ててしまう傾向がありますが、オンラインでの交流は、あくまでも、学習における刺激の誘発や生徒間の交流、キッカケ作り、分からない内容のケアなど一部の目的に向けた活動あって、学習へのモチベーションや生徒が取り残されない様に支援することなど、非同期の部分に対する後援も考えていく必要があります。

 インターナショナルスクールなどではカウンセラーの方々が常在されているなど手厚い体制が整備されていて、授業に来ない生徒や課題を提出出来ないという問題などに個別のフォローをしてくださいますが、ご家庭やお子さんの状況によってうまくサイクルを回せない場合もあると思うので、学校の役割がますます大切になってきますね。


 次回のインタビューでは、竹村代表が激奨する「探究学習」や「PBL(Project Based Learning)」、並びに「日本の大学が実施するAO入試」についての意見を伺っていきます。

(取材:角田雅治 @miyabi_media)
(デザイン:射落美生乃 @00trans_)


〜 竹村詠美代表 プロフィール 〜

竹村詠美(Learn by Creation代表)

経営コンサルティングで国内外の戦略プロジェクトを経験後、アマゾン、ディスニーのネット事業などの日本経営メンバーとして、サービスの事業企画や立ち上げ、マーケティング、カスタマーサポートなど幅広い業務に携わる。2011年に共同創業した「Peatix.com」は現在27カ国、350万人以上のユーザーをもつ。創造性溢れるライフロングラーナーを育てる教育文化作りやSTEAM/PBL教育を中心テーマに活動中。Learn X Creation の発起人の1人であり、今回の事務局長を務める。Most Likely to Succeed 日本アンバサダー、Peatix.com 相談役、総務省情報通信審議会、大阪市イノベーション促進評議会委員なども務める。小・中学生二児の母。

Twitter:@tokyopingu
Learn by Creation HP:learnx.jp
Future Edu Tokyo HP:futureedu.tokyo


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『新・エリート教育 混沌を生き抜くためにつかみたい力とは?』

竹村詠美 (2020/7/23)(日本経済新聞出版)

【竹村代表 コメント】

 今回私の過去5年に渡る国内外の先端教育現場の視察や調査を元に執筆した本を 7月23日に上梓させて頂く運びとなりました。
 書籍は『新・エリート教育  ~ 混沌を生き抜くためにつかみたい力とは?』というタイトルで、これからのエリートは知識偏重型ではなく、心身頭のバランスが取れたクリエイティブ・リーダーであると提案させて頂いております。そして、クリエイティブ・リーダーを育む学びとして米国で広がっているホール・チャイルド・アプローチ(学習者中心の学び)のあり方や、広がり、取り入れるにあたっての考え方などについて幅広く紹介させて頂いております。ホール・チャイルド・アプローチ(学習者中心の学び)の方向性は、新学習指導要領で提唱している「主体的・対話的で深い学び』に沿っていることを解説し、具体的な選択肢や可能性を提案させて頂いております。ご参考までに目次はこちらです。https://bit.ly/3gWrK4A
 本書は若手の先生達や行政の方、保護者、社会で教育に関心のある方々に手に取っていただき、深い学びを実践する現場としてのホール・チャイルド・アプローチ(学習者中心の学び)の必要性を海外事例の観点から伝え、先生もご尽力されている日本の学びの改革の一助となることを目指しております。

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