SDGs-9、産業と技術革新の基盤をつくろう【連載|高校生が現代を考える#15】

 持続可能な社会、地球を未来に残すための目標を定めたSDGs。この連載では、17回にわたってその17の目標をひとつひとつ読み解き、向き合っていきたいと思います。現代人によって生み出された多くの問題を解決する責任は全ての人にあります。未来の世代に少しでもよい地球を残すため、ぜひ、当事者の一人として、自分にできることを考えつつ読んでいただけたらと思います。


SDGs-17 Goals 連載一覧

SDGs-1、貧困をなくそう【連載|高校生が現代を考える #6】

SDGs-2、飢餓をゼロに【連載|高校生が現代を考える #7】

SDGs-3、全ての人に健康と福祉を【連載|高校生が現代を考える #8】

SDGs-4-1、質の高い教育をみんなに【連載|高校生が現代を考える #9】

SDGs-4-2、質の高い教育をみんなに【連載|高校生が現代を考える #10】

SDGs-5、ジェンダー平等を実現しよう【連載|高校生が現代を考える#11】

SDGs-6、安全な水とトイレを世界中に【連載|高校生が現代を考える#12】

SDGs-7、エネルギーをみんなに、そしてクリーンに【連載|高校生が現代を考える#13】

SDGs-8、働きがいも、経済成長も【連載|高校生が現代を考える#14】


 さて、今回のテーマはSDGsの9番目の目標である「産業と技術革新の基盤をつくろう」です。アメリカのGAFA、中国のBATHをはじめとし、シリコンバレーや深圳で急進的に発展しているハイテク産業ですが、我らが日本を始め、多くの国では米中いずれかの巨大プラットフォームに頼りきっているという状況です。これでは発展途上国が経済成長することはできるのか、甚だ疑問でなりません。

 産業構造が大きく転換しつつある21世紀をサステイナブルな経済社会にするために、産業のあり方、イノベーションを起こす基盤をもう一度整備しなければならないのだと思います。アメリカや中国に負けず劣らず、新しいモノを生み出せる社会をつくるにはどうしたらよいのか、日本だけにとどまらず、発展途上国の目線でも検討していきたいと思います。

産業革命の歴史を振り返って

 今後のイノベーションを考えていく前に、これまでの産業の変遷に目を向けてみましょう。人類史という長い目で見ると、農耕が始まったことでさえもつい最近のことになりますが、第一次産業革命と呼ばれる蒸気機関の発明・発展と、それと時を同じくする資本主義の勃興は今から200~300年前になります。

 蒸気機関の発明によって、これまで人間の手や自然の力に頼っていた生産や移動といった生活の営みが徐々に工学的なモノに依存していくようになります。それから、第二次産業革命として位置づけられる電気(electricity)の利用が進行するにつれて、機械が家庭の中にも浸透していくようになり、今ではすべての家事が電化製品の力を借りて成されているといっても過言ではないでしょう。それに加えて、ここ30年ほどで成された第三次産業革命、いわゆるコンピュータの発達です。このコンピュータも元は第二次世界大戦中に情報戦を有利に進めるために開発された軍事用機械ですが、今ではあらゆるオフィス、そして家庭に行き渡っています。

 また、各段階における産業革命では、新しいエネルギーの利用、技術の開発が成し遂げられたわけではなく、その技術そのものがより卓越したものへと改良が重ねられていきました。例えば、テレビです。普及し始めて間もない頃は、とても厚く、チャンネルを切り替える操作もテレビ本体についているスイッチを回さなければなりませんでした。僕は、そのようなテレビを見たことはありませんが、某国民的アニメにその様子が幾度となく登場しているので大方の想像はつきます。しかし、2020年現在、家電量販店に並んでいるテレビは、とても薄く、リモコン操作でチャンネル選択ができ、高画質であり、すべての番組を録画しておくことができ、おまけにインターネットにつながることさえできます。

 コンピュータの発達はもっと著しく、ムーアの法則という半導体の超加速度的な成長を述べた法則に従って、限界のない発展が続いています。たった20、30年前は数MB(メガバイト)といった今となってはわずかしかないハードディスクを備えたコンピュータが一般的でしたが、今では数TB(テラバイト)程度のコンピュータは当たり前になっています。僕がこの記事を執筆しているコンピュータは、3年ほど前に購入したものですが、1TBのハードディスクを備えており、空き容量はまだまだたくさんあります。さらに、各社、クラウド環境の開発にしのぎを削っており、膨大な量のデータをコンピュータで扱えるようになっています。

 おまけに、コンピュータは今となっては手のひらに収まるようになりました。スマートフォンの登場です。スマートフォンは、今高校生の僕よりもにわかに若い、まだ歴史の浅い製品ですが、今や世界中に普及しており、スマートフォン一つで買い物も、仕事も、コミュニケーションも、何でもできてしまいます。

今起きていること

 さて、産業革命の歴史を振り返ってみました。これに加えて、現在進行中の第四次産業革命があります。この第四次産業革命は、今話題のAI技術とそこから派生して生まれる様々な技術が中心です。ここで、第一次産業革命(蒸気機関)と第二次産業革命(電気の利用)の二つとコンピュータ、スマートフォン、AIなど現在イノベーション合戦が繰り広げられている諸技術とでは大きな違いがあります。

 それは、スタート地点に大きな差があるか否かです。車を例に挙げると、日本では高度経済成長期であった1950年代から家庭への普及が進んでおり、今では必要な人にほぼ行き渡っている状況ですが、発展途上国ではそうではありません。また、まだ運転免許書を持っていない僕と、大人とでは知識の差も大きいと思います。

 しかし、スマートフォンではどうでしょうか。僕が小学生の時に普及が始まりましたが、これはつまり、大人も同じ時に初めてスマートフォンに触れたといえます。また、日々進化するスマートフォンについていけているのは、どちらかといえば中高生や若者の方だと思います。さらに、スマートフォンは一台で仕事の手段の一つになりうるというニューエコノミー的利便性から、発展途上国での普及も著しいです。ソフトウェアの開発にはコンピュータが欠かせませんが、スマートフォン上でアプリ開発が容易にできるようになるのも時間の問題でしょう。

 言ってみれば、世界各地でイノベーションが起きやすい環境が整っているのです。しかし、スマホ関連のイノベーションといえばシリコンバレー、深圳といったように、イノベーションの源泉地が限られてしまっているように見えます。なぜ、このようなことが起きているのでしょうか。

 この一連のスマートフォン産業も、元はといえばアメリカから始まったと言っても過言ではないでしょう。最初に発表したAppleも、追随したGoogleも、スマートフォン創出期を支えた企業やサービスはほぼアメリカ生まれです。それは、コンピュータ産業の流れを汲んでいるからでもあるでしょう。そのような最初に手を挙げた企業群が、先行者利益を大きく享受して、さらに投資を重ね、優秀な人材をかき集め、現在のような構図をつくってしまっています。これでは、たとえ良いサービスを生み出したとしても巨大な企業に飲み込まれるか、競争に負けるかという未来しか描けず、不安が先行してしまうのではないかと思います。これでは、イノベーションが起こりやすい環境だとはとても言えません。

 例えば、近年データ利用や利用者間のリテラシーが問題となっているSNSですが、 アメリカのFacebook社とTwitter社、そして中国のテンセント社のサービスが大きな地盤を固め、今から新たなSNSサービスを作ろうと思ってもサービスの世界規模はおろか、日本国内だけでさえも、その浸透は難しいと考えられます。

国家の介入が必要、でも…

 マスコミ等でも度々指摘されている通り、ネット上のサービスは少数の巨大企業による寡占の上に成り立っています。お金も人も、そして我々のデータも一か所に集まっているのが現状です。EUが先見的に取り組んでいるように、巨大IT企業に対して何らかの措置を取ることをもっと議論するべきではないでしょうか。

 今回取り上げたSDGsの9番目の目標「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、個人で解決に取り組むにはあまりにも大きすぎるような課題だと考えています。もちろん、個人が不断よりアイデアの創出に取り組むことは欠かせませんが、それだけでは世界のあらゆる国でイノベーションが起きるには小さすぎるかもしれません。産業の基盤をつくるにも、技術革新の基盤をつくるにも、政府が何らかの政策を打たなければなりません。時には、他国と連携・協力し合って解決への道筋を模索していく必要があるかもしれません。

 しかし、政府に頼りきるだけでは、SDGsの目指している世界のあるべき姿とはほど遠いでしょう。何か、僕たち個人でできることはないのでしょうか。僕が思いついた、僕たちにできる産業と技術革新の基盤をつくるための取り組みをご紹介しておきます。

 先ほど、巨大IT企業に対して、政府が何らかの規制をかけるべきだと述べましたが、僕たちもそれらの巨大IT企業のサービスを利用する時に、接し方を変えてみるべきかもしれません。例えば、個人情報を入力しなければならないとき、位置情報を利用されるとき、情報検索を利用するとき、これらすべての瞬間にプラットフォーマー企業は僕たちに関する情報を収集しているのです。この時に、自分が本当に提供しなければならない情報なのかを逐一考えてみると良いのではないかと思います。一人一人がこういった意識改革を行なうとある種のムーブメントが起き、政府も対策を取る口実になり、解決への糸口になるかもしれません。

 また、巨大IT企業への依存を減らすという意味では、それらの企業が僕たちに最適化してきたサービスに受動的になりすぎないのも大切かもしれません。ニュースサイトや動画共有サービスでは、ユーザーの過去の行動から最適化されたレコメンドがトップ画面に表示されます。また、ユーザーの行動を統計学的に分析して、企業はアプリの仕様を変更したり、新しい機能をつけてくることもあります。これは、情報を効率的に得たり、利便性の向上がなされたりするので良い面が大きいのですが、すぐにそれに適応してしまうのではなく、一呼吸置くくらいの距離感を持つべきだと僕は思います。たまには、デジタル・デトックスといった反デジタル的な一日を送ってみるのも得策でしょう。デジタルに対して少し能動的なアプローチを取ることで、新たな視点が生まれ、次のイノベーションにつながることだってあるはずです。皆さんも、自分に合ったものからでの行動してみてはいかがでしょうか。

(文責:NGT @ngt_nanoka)

画像引用元:
外務省『持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組』PDFより (2020.08.05) https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/SDGs_pamphlet.pdf

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miyabi_kyosaka
教育実践キュレーター。慶應義塾大学在学中。NPO法人日本教育再興連盟ROJE所属。読売新聞学生記者。日本若者協議会所属。某 AO入試専門塾講師。N高等学校出身。|「未来は予測するのものではなく、この手で創る」をモットーに圧倒的行動で教育を一新しようと、教育ジャーナリズムの活動をしております。